外国の株式や債券に投資する投資信託やETFを選んでいると、「為替ヘッジあり」「為替ヘッジなし」という表記を目にすることがあります。この違いが何なのか、どちらを選べばいいのか、迷ったことはないでしょうか。
為替ヘッジとは何か
為替ヘッジとは、為替レートの変動による影響を抑えるための仕組みです。たとえば円高が進むと、ドルで運用している資産を円に換算したときに目減りしてしまいます。為替ヘッジありの商品は、この目減りリスクを軽減するための工夫が施されています。
ヘッジありとヘッジなし、何が違う?
具体的な数字で考えてみましょう。1ドル160円のときに100万円分の米国資産を購入したとします。この場合、保有している資産はドル換算で約6,250ドルです。
その後、円高が進んで1ドル100円になったとします。株価がまったく動いていなくても、6,250ドルを円に換算すると62.5万円になってしまいます。為替だけで約37万円の目減りです。為替ヘッジありの商品であれば、この影響を抑えることができます。
一方、円安が進んで1ドル220円になった場合はどうでしょう。6,250ドルは円換算で137.5万円になり、株価が変わらなくても37万円以上のプラスになります。ところが為替ヘッジありの商品では、この円安の恩恵をほとんど受け取ることができません。
| ヘッジあり | ヘッジなし | |
|---|---|---|
| 円高時(160円→100円) | 影響を受けにくい | 資産が目減りする |
| 円安時(160円→220円) | 恩恵を受けられない | 資産が増える |
| 手数料 | 割高(ヘッジコストが上乗せ) | 割安 |
| 向いている人 | 円高リスクが気になる人 | 長期で淡々と運用したい人 |
見落とされがちな「ヘッジコスト」
ここで一つ、初心者の方に必ず知っておいてほしいことがあります。それが「ヘッジコスト」です。
為替ヘッジは無料ではありません。ヘッジをかけるには、日本とアメリカの金利差にほぼ等しいコストがかかります。2023〜2024年のように日米の金利差が大きい局面では、このヘッジコストが年4〜5%程度にもなります。
つまり、ヘッジありの商品は「円高に強い」というメリットと引き換えに、毎年数%のコストを払い続けることになります。これは長期で見るとかなり大きな差です。信託報酬の0.1%を気にする一方で、ヘッジコストの数%を見落とすと、本末転倒になりかねません。
実際の数字で見てみよう
2019年末にS&P500連動の米国株ファンドに100万円を投資した場合、2024年末時点でどうなっていたかをシミュレーションしてみます。
| 年 | S&P500 | ドル円 | ヘッジあり | ヘッジなし |
|---|---|---|---|---|
| 2019年末(購入時) | 約3,230 | 約109円 | 100万円 | 100万円 |
| 2020年末 | 約3,756 | 約103円 | 116万円 | 110万円 |
| 2021年末 | 約4,766 | 約115円 | 148万円 | 156万円 |
| 2022年末 | 約3,839 | 約132円 | 119万円 | 144万円 |
| 2023年末 | 約4,769 | 約141円 | 148万円 | 191万円 |
| 2024年末 | 約5,881 | 約157円 | 182万円 | 262万円 |
※株価と為替の概算値による簡易シミュレーションです。さらに、上記のヘッジありにはヘッジコストを含めていません。実際にはヘッジコスト(この期間は年4〜5%程度の年もありました)が差し引かれるため、現実のヘッジありの成績は、この表よりさらに低くなります。
注目したいのは2022年です。S&P500が約19%下落した厳しい年でしたが、ヘッジなしの評価額は144万円と、下落がかなり和らいでいます。株価の下落を円安が補ってくれたためです。この5年間はヘッジなしが有利な結果となりました。
ただし、これはたまたま円安トレンドが続いた時期の話です。円高が進む局面では、まったく逆の結果になります。
為替は読めない、だから迷わない
為替がこれからどちらに動くかを正確に予測できる人は、プロの投資家でもほとんどいません。この5年のように円安が続く局面もあれば、かつての2011〜2012年のように1ドル75円台まで円高が進んだ時期もありました。どちらに動くかは誰にもわかりません。
読めないものに時間とエネルギーをかけるよりも、淡々と運用を続けるほうが長期的には合理的だと私は考えています。そのため、基本的にヘッジなしの商品を選んでいます。ヘッジコストがかからないぶん、長期の積立とも相性がいいです。
一部だけヘッジするという選択肢
とはいえ、為替の動きがどうしても気になる方もいると思います。そういった場合は、ポートフォリオの一部だけヘッジありの商品を組み入れるという方法もあります。全額ヘッジにこだわる必要はなく、自分が安心して持ち続けられる割合を探ることが大切です。
まとめ
為替ヘッジは万能ではなく、メリットとデメリットの両面があります。特に、ヘッジありには金利差ぶんのヘッジコストがかかる点は見落とされがちです。過去5年の実績ではヘッジなしが有利でしたが、円高に転じれば話は変わります。読めない為替に振り回されるより、自分のリスク許容度に合った方針を決めてコツコツ続けることのほうが、長期投資では大切だと思います。
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※本記事は執筆時点の情報をもとにした一般的な情報提供であり、特定の金融商品を推奨するものではありません。シミュレーションの数値は概算であり、将来の運用成果を示すものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

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