こんにちは、ともやんです。
確定拠出年金(iDeCoや企業型DCのマッチング拠出)って、「掛金が全額所得控除になってお得!」とよく語られます。私も基本的にはその通りだと思っていますし、節税メリットは本物です。
ただ、自分の老後資産をあれこれシミュレーションしていて、ある盲点に気づきました。掛金を増やしすぎると、同じお金をNISAに入れた場合より手取りが減ってしまうケースがあるんです。今日はそのあたりを、具体的な数字を出しながら整理してみます。
先に結論から書いておきます。手取りだけで見れば「NISAを優先して埋めて、はみ出した分だけiDeCo」が一番効率的でした。ただしiDeCoには60歳まで引き出せないという制約があるので、その流動性とのバランスで、掛金を月1万円程度に抑えるか、満額までやるかを自分で選ぶ、というのが現実的な落とし所だと考えています。
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iDeCo・DCの「入口」は確かにお得
まず誤解のないように書いておくと、iDeCoや企業型DCのマッチング拠出は、拠出フェーズのメリットがとても強力です。掛金が全額所得控除になるので、拠出した時点で所得税と住民税が軽くなります。
たとえば年収500万円くらいのサラリーマンだと、限界税率(所得が増えたときに適用される一番高い税率帯)は所得税10%+住民税10%で20%ほどです。年12万円(月1万円)を拠出すれば、毎年2.4万円が税金で戻ってくる計算になります。これに加えて、運用中の利益も非課税で複利が効きます。
この「入口の所得控除+運用中非課税」という組み合わせは、課税口座(特定口座)でインデックスファンドを買うのと比べれば、明確に有利です。ここは間違いありません。
問題は「出口」で課税されること
ところが、NISAと決定的に違うのが、iDeCo・DCは受け取るときに課税されるという点です。NISAは出口が完全非課税ですが、iDeCo・DCは「入口で控除する代わりに、出口で課税する」という、いわば課税の繰り延べの仕組みになっています。
一時金で一括受取する場合は退職所得扱いになり、退職所得控除が使えます。控除額は加入年数で決まり、たとえば加入30年なら1500万円です。この控除を超えた部分も、その2分の1だけが課税対象になるので、かなり優遇されてはいます。
ただ、ここがポイントなのですが、運用がうまくいって残高が大きく育つほど、この退職所得控除を超える部分が膨らみ、出口で支払う税金もどんどん大きくなっていきます。NISAなら何億円に育っても出口課税はゼロですが、iDeCo・DCは育てば育つほど出口の税金が重くのしかかってくるわけです。
同じ金額なら、どの入れ方が一番得か
では実際にどれくらい差が出るのか。年収500万円のサラリーマンが、毎月同じ自腹額を30年間積み立てると仮定して、入れ方のパターンを5つ比較してみました。前提は「年収500万円(限界税率20%)・30年・退職金なし・全額一時金受取」です。
比較する5パターンの中身を、先に説明しておきます。どのパターンも自腹で出すお金の総額は同じに揃えています。
①全額NISA(超過は特定)……自腹を全額NISAに入れる方法です。NISAには生涯1800万円という上限があるので、それを超えた分は特定口座(課税口座)に回します。
②iDeCo満額+節税現金……自腹を全額iDeCo・DCに入れ、入口で浮いた節税分は運用せず現金のまま持っておく方法です。「節税になるから」と満額入れて、戻ってきた税金は使ってしまう人がこれに近いイメージです。
③iDeCo満額+節税特定……自腹を全額iDeCo・DCに入れ、浮いた節税分を特定口座で再投資する方法です。
④iDeCo満額+節税NISA……自腹を全額iDeCo・DCに入れ、浮いた節税分をNISAで再投資する方法です。節税分を非課税で運用するので、iDeCo満額勢のなかでは一番効率がいいパターンです。
⑤全額NISA+超過iDeCo……NISAを優先で埋めて、NISA枠からはみ出す分だけをiDeCo・DCに回す方法です。NISAの非課税メリットを最大限使いつつ、はみ出し分にはiDeCoの入口節税も乗せられます。
表の見方ですが、iDeCoに入れた本体と、入口で浮いた節税分を再投資したぶんを分けて表示しています。最後の「手取り」が、出口の税金を全部引いたあとに残るお金です(単位は万円)。
掛金 月6.2万円・年率10%の場合
| パターン | 元本 | 運用益 | 出口課税 | 節税元本 | 節税運用益 | 節税課税 | 手取り |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ①全額NISA(超過は特定) | 2,232 | 11,230 | 35 | 0 | 0 | 0 | 13,427 |
| ②iDeCo満額+節税現金 | 2,232 | 11,230 | 2,856 | 446 | 0 | 0 | 11,052 |
| ③iDeCo満額+節税特定 | 2,232 | 11,230 | 2,856 | 446 | 2,246 | 456 | 12,842 |
| ④iDeCo満額+節税NISA | 2,232 | 11,230 | 2,856 | 446 | 2,246 | 0 | 13,298 |
| ⑤全額NISA+超過iDeCo | 2,232 | 11,230 | 0 | 86 | 29 | 6 | 13,571 |
※⑤の配分:NISAに月5万円+iDeCoに月1.2万円(掛金6.2万円のうち、NISA枠を埋めた残りをiDeCoへ)
掛金 月6.2万円・年率15%の場合
| パターン | 元本 | 運用益 | 出口課税 | 節税元本 | 節税運用益 | 節税課税 | 手取り |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ①全額NISA(超過は特定) | 2,232 | 34,965 | 58 | 0 | 0 | 0 | 37,139 |
| ②iDeCo満額+節税現金 | 2,232 | 34,965 | 9,496 | 446 | 0 | 0 | 28,148 |
| ③iDeCo満額+節税特定 | 2,232 | 34,965 | 9,496 | 446 | 6,993 | 1,421 | 33,720 |
| ④iDeCo満額+節税NISA | 2,232 | 34,965 | 9,496 | 446 | 6,993 | 0 | 35,141 |
| ⑤全額NISA+超過iDeCo | 2,232 | 34,965 | 0 | 86 | 63 | 13 | 37,319 |
※⑤の配分:NISAに月5万円+iDeCoに月1.2万円(掛金6.2万円のうち、NISA枠を埋めた残りをiDeCoへ)
掛金 月7.5万円・年率10%の場合
来年(2027年1月)からの制度改正で拠出限度額が引き上げられる予定なので、上限が広がったケースとして月7.5万円(年90万円)でも計算してみました。
| パターン | 元本 | 運用益 | 出口課税 | 節税元本 | 節税運用益 | 節税課税 | 手取り |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ①全額NISA(超過は特定) | 2,700 | 13,585 | 138 | 0 | 0 | 0 | 16,147 |
| ②iDeCo満額+節税現金 | 2,700 | 13,585 | 3,646 | 540 | 0 | 0 | 13,179 |
| ③iDeCo満額+節税特定 | 2,700 | 13,585 | 3,646 | 540 | 2,717 | 552 | 15,344 |
| ④iDeCo満額+節税NISA | 2,700 | 13,585 | 3,646 | 540 | 2,717 | 0 | 15,896 |
| ⑤全額NISA+超過iDeCo | 2,700 | 13,585 | 6 | 180 | 60 | 12 | 16,507 |
※⑤の配分:NISAに月5万円+iDeCoに月2.5万円(掛金7.5万円のうち、NISA枠を埋めた残りをiDeCoへ。この月2.5万円が手取り最大化の上限ライン)
掛金 月7.5万円・年率15%の場合
| パターン | 元本 | 運用益 | 出口課税 | 節税元本 | 節税運用益 | 節税課税 | 手取り |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ①全額NISA(超過は特定) | 2,700 | 42,296 | 244 | 0 | 0 | 0 | 44,752 |
| ②iDeCo満額+節税現金 | 2,700 | 42,296 | 11,677 | 540 | 0 | 0 | 33,859 |
| ③iDeCo満額+節税特定 | 2,700 | 42,296 | 11,677 | 540 | 8,459 | 1,718 | 40,600 |
| ④iDeCo満額+節税NISA | 2,700 | 42,296 | 11,677 | 540 | 8,459 | 0 | 42,318 |
| ⑤全額NISA+超過iDeCo | 2,700 | 42,296 | 51 | 180 | 94 | 19 | 45,200 |
※⑤の配分:NISAに月5万円+iDeCoに月2.5万円(掛金7.5万円のうち、NISA枠を埋めた残りをiDeCoへ。この月2.5万円が手取り最大化の上限ライン)
表から分かること
4つの表に共通しているのは、どのパターンも元本と運用益はまったく同じだという点です。同じ金額を同じ年率で運用するので、お金の育ち方そのものは一緒。差がつくのは「出口でいくら税金を取られるか」だけです。
順位は4パターンとも同じで、⑤(全額NISA+超過iDeCo)が一番手取りが多く、次いで①、④、③と続き、②(iDeCo満額で節税分を運用しない)が最下位でした。
ちなみに一番得だった⑤を実際にやる場合の毎月の配分ですが、NISAの生涯枠1800万円を30年で埋めるには月5万円ずつ積めばちょうど使い切れます。なので、掛金が月6.2万円なら「NISAに月5万円+iDeCoに月1.2万円」、月7.5万円なら「NISAに月5万円+iDeCoに月2.5万円」というのが⑤の具体的な配分になります。NISAを軸に置いて、あふれた分だけiDeCoに流す、というイメージです。
そして大事なのが、掛金を増やすほど、また年率が高くなるほど、iDeCo満額勢(②③④)と全額NISA優先(①⑤)の差が広がっていくことです。月6.2万円・年率10%なら⑤と④の差は300万円程度ですが、月7.5万円・年率15%になると差は3000万円近くまで開きます。残高が大きく育つほど出口課税が膨らむので、その差が手取りにそのまま響いてくるわけです。
iDeCo満額勢の中で一番マシなのは④、つまり入口で浮いた節税分をきちんとNISAで再投資するパターンです。それでも全額NISA優先には届きません。さらに②のように節税分を使ってしまったり現金で寝かせたりすると、差はもっと開きます。「節税になるから」とiDeCoに満額入れて、浮いたお金を生活費に溶かしてしまう人が、実は一番損をしやすいという結果でした。
なぜNISA優先が効くのか
理由はシンプルで、NISAは出口が完全非課税だからです。iDeCo・DCは入口の所得控除と引き換えに出口で課税されますが、その出口課税は残高に比例してどんどん膨らみます。一方NISAは、何億円に育ってもゼロ。だから運用がうまくいって大きく育つほど、NISAの非課税メリットがiDeCoの出口課税を上回っていきます。
入口で浮いた節税分をNISAで再投資すればiDeCoの傷は浅くなりますが、それでもNISAそのものを超えることはできない、という関係です。
では、いくら入れるのが正解か
ここまでは「手取り」だけを基準にした話でした。でも、掛金をいくらにするか決めるときは、もうひとつ大事な要素があります。iDeCoには、手取りの数字には表れないデメリットがあるからです。それは、60歳まで引き出せないということです。
これは投資というより「使えないお金になる」という制約です。住宅資金や教育費、急な出費など、人生には現金が必要な場面がいくつもあります。手取りが多少増えるからといって、生活を圧迫してまでiDeCoに資金を固定するのは本末転倒です。掛金を増やしすぎると、こうした流動性の面でも負担が大きくなる、という点には注意しておきたいところです。
なので私が考える現実的な落とし所はこうです。まずNISAを最優先で埋める。これは出口非課税で流動性も高く、いつでも引き出せるので、ほぼデメリットがありません。そのうえでiDeCo・DCをどう使うかは、流動性とのバランスで2つの選び方があると思っています。
ひとつは、60歳まで引き出せない制約を重く見て、iDeCoは月1万円程度の控えめな額にとどめる選び方。掛金が小さければ出口課税も軽く、入口の節税メリットを素直に享受できますし、生活の自由度も保てます。
もうひとつは、当面使う予定のない余裕資金がしっかりあって、流動性ロックが気にならない人が、節税メリットを最大化するために満額まで入れる選び方。この場合は、入口で浮いた節税分を必ずNISAで再投資することがセットです。これを忘れると、表の②のように一番損なパターンに転落してしまいます。
どちらが正解ということはなく、自分の家計の余裕や、60歳までにお金が必要になる可能性をどう見るかで決めればいいと思います。大事なのは「節税になるから」と反射的に満額にするのではなく、出口課税と流動性ロックの両方を意識したうえで、自分の掛金を決めることです。
注意点
最後にいくつか補足です。今回の試算は退職金がない前提です。会社から退職金が別にある人は、退職所得控除の枠を退職金と取り合うことになるので、iDeCoの出口課税はさらに重くなり、NISA優先の有利さがより強まります。
これに関連して、2026年からの制度変更にも触れておきます。これまでは、iDeCoの一時金を受け取ってから5年以上あければ、退職金と別々に退職所得控除を使えました。ところがこの「空ける期間」が5年から10年に延長されました。たとえば60歳でiDeCoを一時金で受け取り、65歳で退職金を受け取るようなケースでは、控除が重複して使えず、税負担が増えることになります。退職金がある人ほど、この受け取りタイミングの問題は効いてくるので、ますますNISAを優先しておく意味が大きくなります。
また、年率10〜15%という数字はかなり強気の前提です。実際のオルカン(全世界株式)の期待リターンは5%前後を見ておくべきで、その場合は残高の膨らみが緩やかになり、満額でも損しにくくなります。今回はあえて「うまくいったケース」で計算することで、運用が成功するほどNISA優先が効いてくる、という構造を見えやすくしています。
そして大前提として、NISAもiDeCoも税制が改正されるリスクは常にあります。ただこれはどちらか一方だけのリスクではなく、特定口座の増税や社会保険料の引き上げも議論されている以上、どの器にもついて回る話です。だからこそ、今の制度のなかで一番効率の良い順番を押さえておくことに意味があると思っています。
まとめ
今日の内容を整理します。iDeCo・DCは入口の所得控除が魅力ですが、出口で課税される設計のため、残高が大きく育つほど出口の税負担が膨らみます。同じ金額を入れるなら、出口非課税のNISAを優先するほうが手取りは多くなり、その差は掛金が大きいほど、年率が高いほど広がります。とはいえiDeCoには60歳まで引き出せない制約もあるので、まずNISAを埋めたうえで、iDeCoは流動性とのバランスを見ながら月1万円程度に抑えるか満額までやるかを選ぶ、というのが私の結論です。「節税になるから満額」と短絡せず、出口まで見据えて自分の掛金を決めていきましょう。
最後に、私がメインで使っている松井証券について改めて紹介しておきます。NISAの取引手数料が無料、投資信託の購入時手数料も全ファンド無料で、投信の保有残高に応じてポイントが最大年1%貯まります。貯まったポイントはPayPayポイントやdポイント、Amazonギフト券などに交換できます。クレジットカード積立(JCBカード)にも対応していて、コツコツ積み立てたい人にも使いやすい証券会社です。気になる方は下のバナーから確認してみてください。
※本記事は執筆時点の情報をもとにした一般的な情報提供であり、特定の金融商品や投資手法を推奨するものではありません。税制・制度の内容や試算の前提は変更される場合があり、実際の税額は個々の状況により異なります。具体的な判断は税理士やFPなどの専門家にご相談のうえ、ご自身の責任で行ってください。

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