iDeCo・DCマッチングの『やりすぎ』に注意|出口課税が始まる残高を逆算してみた

iDeCo

こんにちは、ともやんです。

これまでの記事で、iDeCoやDCマッチング拠出は「入口の節税」と「出口の課税」のバランスで損得が決まる、という話をしてきました。今日はその出口側にもう一歩踏み込んで、「結局iDeCoの残高はいくらまでにしておくのがベストなのか」を具体的な金額で逆算してみます。

結論を先に言うと、iDeCoの残高には「ここまでは出口課税ゼロ」というラインと、「ここまでは課税されてもまだ得」というラインの2段階があります。この2つの金額と、そこに到達するまでの年数が分かれば、自分が今どのフェーズにいるのか、いつ拠出額を見直せばいいのかが具体的に見えてきます。

なお、私がNISAやiDeCoの積立に使っているのは松井証券です(詳しくは記事後半で紹介します)。

出口課税には「2つの壁」がある

iDeCoを一時金で受け取るとき、退職所得控除という非課税枠が使えます。控除額は加入年数で決まり、加入20年以下は1年あたり40万円、20年を超えると「800万円+70万円×(加入年数−20年)」です。この枠にきっちり収まっていれば、出口課税はゼロです。

ただ、控除を少し超えたくらいなら、実はまだ「得」なケースが多いんです。理由は、控除を超えた部分は2分の1だけが課税対象になり、しかも他の所得と分離して計算されるという優遇があるから。控除ぴったりを狙うより、もう少し先まで攻めた方がトータルでは有利になることがあります。

そこで注目したいのが、「入口で浮く節税率」と「出口で追加1円にかかる実質的な税率(限界実効税率)」の比較です。この2つが逆転するポイントこそが、本当の意味での「ベストな残高」です。

出口の限界実効税率は階段状に上がっていく

退職所得の課税対象額は「(残高−控除)÷2」で計算され、これに所得税の累進税率と住民税10%がかかります。つまり残高が増えるほど、この「2分の1にした金額」も増えていき、より高い税率帯に入っていきます。

大学卒業から60歳まで38年間iDeCoに加入した場合(退職所得控除は2,060万円)で計算すると、残高が増えるごとに出口の限界実効税率はこう変化します。

残高 出口の限界実効税率
2,060万〜2,450万円 7.6%
2,450万〜2,720万円 10.1%
2,720万〜3,450万円 15.2%
3,450万〜3,860万円 16.7%
3,860万〜5,660万円 21.8%
5,660万〜1億60万円 25.4%

※加入38年(退職所得控除2,060万円)・全額一時金受取・所得税(復興特別所得税込み)+住民税10%で計算した概算です。

年収500〜600万円のサラリーマンの限界税率(入口の節税率)はおよそ20%です。表を見ると、残高が3,860万円までは出口の限界実効税率が20%以下(最大16.7%)に収まっていますが、3,860万円を超えた瞬間に21.8%へジャンプし、入口の節税率20%を上回ります。

つまりこの人にとっての「2つの壁」はこうなります。

①出口課税が完全にゼロになる上限=控除額そのもの=2,060万円。②課税されてもまだ入口の節税の方が上回る損益分岐ライン=3,860万円。3,860万円を超えたら、それ以上の追加拠出はiDeCoよりNISAに入れた方が得、ということになります。

このラインにいつ到達するのか

年率10%で運用した場合、①と②のラインにそれぞれ到達するために必要な毎月の積立額を、60歳までの残り年数別にまとめました。

60歳までの残り年数 ①2,060万円に必要な月額 ②3,860万円に必要な月額
10年 9.79万円 18.35万円
15年 4.91万円 9.20万円
20年 2.72万円 5.11万円
25年 1.59万円 2.97万円
30年 0.95万円 1.78万円
35年 0.58万円 1.08万円
38年(大卒からフル加入) 0.43万円 0.80万円

※毎年の積立を年率10%で複利運用した場合の概算です。控除2,060万円は38年加入の前提のため、残り年数が短い方は控除額もその分小さくなる点にご注意ください。

残り年数が長いほど、少額の積立でも控除枠いっぱいまで到達できることが分かります。大学卒業からずっと積み立てるなら、月1万円にも満たない額で控除額の2,060万円に届いてしまいます。逆に、退職が近づいてから慌てて積み立てようとすると、必要な月額が跳ね上がります。

参考までに、掛金上限の月6.2万円(企業年金のない会社員の引き上げ後の水準)でずっと積み立て続けた場合、①の控除ぴったり(2,060万円)には14年目で到達し、②の損益分岐(3,860万円)には19年目で到達します。つまり満額を続けている人は、19年を過ぎたあたりから「そろそろ拠出額を見直すタイミング」に入っている、ということです。

だから「若いうちはほどほど」でいい

この表から見えてくるのは、若くて残り年数が長い人ほど、無理に満額を狙う必要がないということです。38年フルで加入できるなら、月1万円未満でも控除枠に届いてしまうくらいなので、iDeCoは軽めにして、余裕資金はNISAに回すほうが理にかなっています。NISAは出口が完全非課税で、いつでも引き出せる流動性もあるので、若いうちの資産形成の主軸としてはNISAを優先するのが素直です。

そのうえで、今後インフレが進んで年収が上がっていくことを考えると、優先順位は次のようになると思っています。

まずNISAを最優先で埋める。次に、iDeCo・DCを損益分岐ライン(今回の例なら3,860万円)に達するまで活用する。前回の年収別シミュレーションで見たとおり、年収が上がって限界税率が30%を超えるようなら、このラインはもっと先に伸びるので、iDeCoをより積極的に使う余地が生まれます。そして、NISAの生涯枠(1,800万円)とiDeCoの損益分岐ラインを両方使い切ったら、そこから先は課税口座(特定口座)に回す、という順番です。

年収が上がるたびに損益分岐ラインが動くので、この配分は一度決めたら終わりではなく、年収の節目ごとに見直すのがおすすめです。

注意点

今回の試算は退職金なし・全額一時金受取が前提です。退職金が別にある人は退職所得控除の枠を退職金と取り合うので、①②のラインはもっと手前に来ます。しかも2026年以降は、iDeCoの一時金と退職金の受け取り間隔を10年以上あけないと控除を別々に使えないルールに変わっており、受け取りタイミングの自由度も下がっています。また年率10%という前提はやや強気で、実際のオルカンなどの期待リターンは5%前後を見ておくのが現実的です。年率が下がれば、同じラインに到達するのにより長い年数がかかります。

それから、iDeCoには60歳まで引き出せないという制約もあります。損益分岐ラインまで拠出を続けられるかどうかは、税金の損得だけでなく、その間に必要になる可能性のある資金(住宅・教育費など)とのバランスも合わせて考える必要があります。

税制(退職所得控除・iDeCoの拠出限度額など)は改正の議論が続いている分野でもあるので、実際に受給が近づいたら最新の制度で確認することをおすすめします。

まとめ

iDeCo・DCの出口課税には「控除額まではゼロ」「損益分岐ラインまでは課税されてもまだ得」という2段階があり、加入年数や年収によって具体的な金額が変わります。残り年数が長い人ほど少額の積立で控除枠に届くので、若いうちは無理に満額を狙わず、NISAを優先しつつiDeCoはほどほどに。年収が上がって損益分岐ラインが伸びていくのに合わせて、NISA→iDeCo(損益分岐ラインまで)→特定口座、という順番で資金を振り分けていくのが、長い目で見て効率のいい積み立て方だと思います。

最後に、私がNISAとiDeCoの積立に使っている松井証券を紹介しておきます。NISAなら日本株・米国株・投資信託の売買手数料が無料、投資信託の購入時手数料も全銘柄無料です。さらに、投資信託を保有しているだけで残高に応じて最大1%のポイントが貯まるサービスがあり、iDeCoで保有している投資信託までポイント還元の対象になるのは松井証券だけです。NISAとiDeCoを両輪で長く積み立てていくなら、この差は地味に効いてきます。口座開設は無料なので、気になる方は下のバナーからチェックしてみてください。

松井証券

※本記事は執筆時点の情報をもとにした一般的な情報提供であり、特定の金融商品や投資手法を推奨するものではありません。試算は一定の前提に基づく概算であり、実際の税額は加入年数・退職金の有無・受け取り方など個々の状況により異なります。具体的な判断は税理士やFPなどの専門家にご相談のうえ、ご自身の責任で行ってください。

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